終活としての生前整理の進め方

終活や生前整理という言葉が世間に広く知れ渡って久しいです。現在の日本は65歳以上の高齢者が全人口の21%以上を占める「超高齢化社会」へと突入しています。そのため、今後も終活や生前整理というワードはさまざまなメディアで目にすることでしょう。
しかし、大半の方は終活や生前整理のやり方を知りません。間違った方法で終活や生前整理を行ってしまうと、自身のセカンドライフが楽しくなくなったり、周囲の家族に迷惑をかける可能性もあります。
終活、生前整理の正しい意味や進め方を知って、充実した人生を送るようにしましょう。今回は終活としての生前整理の進め方をまとめましたのでご覧ください。
Contents
終活と生前整理の違い
最近は終活の注目度が上昇傾向にあり、それに比例して生前整理という言葉の認知度も高まってきています。
しかし、終活と生前整理の違いを正確に理解しているという方は少ないのではないでしょうか。そこでまずは「終活」と「生前整理」の意味を今一度おさらいしてみましょう。
終活
終活とは自身の死と向き合い、人生の最後まで自分らしい生き方を送るために行うものです。終活は「人生の終わりについて考える活動」を略した造語であり、2009年に終活に関する書籍が出版されたことで世間一般に知られるようになりました。
さらに2011年に公開された映画「エンディングノート」などの影響によって、社会現象を巻き起こすまでの注目を集めるようになったのです。人は誰でも年齢を重ねると健康状態だけではなく「死」も意識するようになります。
どんなに気持ちが強い人でも自身の最期のことを考えると、不安や心配の感情が湧いてくることが多いです。終活はこの不安や心配の感情をひとつずつ解消できる効果が期待できます。
私たち人間が老後の生活に不安を抱える理由はさまざまですが、主には「残される家族のこと」「自分の物や財産の管理」などが挙げられます。
「自分が死んだら残されることになる家族は大丈夫かな?」「自分がいなくなったあとの所有物や財産の管理はどうすればいいのかな?」といった疑問が心の中を支配するため、自身の死に対して大きな不安や心配を抱くようになります。
終活では自身の所有している物や財産の整理はもちろんのこと、残された家族に残す財産目録などの作成、友人や知人などお世話になった人へ感謝の気持ちを伝えるといったこともします。
日常生活では手をつけない細かい箇所まで整理していくため、終活開始前に抱いていた不安や心配の感情もひとつずつ解消していくことが可能です。
早いうちから終活を行っておくことで、死後のことを考える必要がなくなるため、心身ともに身軽で充実した余生を過ごすことができます。
生前整理
生前整理とは終活の中に組み込まれた整理作業のひとつになります。私たち人間は生活をしていると物が増えていくことが圧倒的に多いです。この中には普段の生活で必ず必要になる物とそうでない物があります。
生活に必要な物は残しておく必要がありますが、使用頻度が低い物などは処分をしていく必要があります。なぜなら不要な物を残したまま人生の最期を迎えてしまうと、その後の家族の負担が大きくなるからです。
自分の死後、家の片付けなどを行うのは残された家族です。このときに不要な物が大量にあると、家族は整理や処分などで膨大な時間が必要になる可能性があります。
また物が大量に残された状態だと、場合によっては自分たちで解決できず、遺品整理業者などの専門家に依頼しなければなりません。
一般的に遺品整理を業者に依頼するのは、生前整理よりも高額な料金になることが多いです(特に生前に終活などを行ってこなかった方など)。
こうなると時間だけではなく、金銭面でも大きな損をすることになります。このような理由から近年は終活の一環として生前整理を強く勧める専門家が多くなっています。
また生前整理は物の整理や処分だけではなく、財産などの整理も行うため、相続トラブルの回避にもつなげることができます。
こうして見ると終活と生前整理はどちらも同じ意味のように聞こえますが、終活は物や財産の整理以外にも人間関係の整理や老後の生き方を考えるなどやることが幅広いです。
それに比べて生前整理はどちらかといえば物や財産の整理、処分などに特化したカテゴリといえるでしょう。
終活としての生前整理の進め方を解説

前述のように終活は00年代後半~10年代で、一気に世間に広まるようになりました。そのため、昨今では終活としての生前整理を検討する方も急増中です。
しかし、具体的な進め方や手順、整理の仕方や注意点などがわからないという方は非常に多いです。ここでは終活の一環として行う生前整理の重要ポイントをまとめましたので解説します。
【ポイント①】周囲に「終活宣言」をする
家族や配偶者と一緒に暮らしている方の場合、こそこそ隠れての終活は非常に難しいです。かといって、いきなり大胆に物の整理や処分を行ってしまうと、家族も「急にどうしたの?」と心配な気持ちになります。
このように家族に余計な心配を抱かせるのはよくないため、終活を始めると決めたら周囲に「終活宣言」をしてしまいましょう。
こうすることで周囲の人間も死に関わるデリケートな話をするのに必要な心を整えることができます。終活をするのに協力者が必要になる方は特にこの点を意識しておきましょう。
【ポイント②】今後の目標や生き方を明確にする
終活の一環として生前整理を行うのであれば、今後の目標や生き方を明確にしておきましょう。たとえばですが定年後は「ゴルフを楽しみたいな」「年に数回は旅行に行きたいな」などの目標やライフスタイルを設定しておくとします。
老後の目標や楽しみ方を設定しておくと、自然と「処分する物」「処分しない物」も把握できるようになります。
老後にゴルフを楽しむのであればゴルフ道具は「処分しない物」に分類することができますし、旅行を楽しむのであれば、旅行に必要のない物は「処分する物」に分けることができます。
このように終活を行う前に今後の目標ややりたいことなどを明確にしておくと、生前整理において必要な物を誤って破棄する可能性も低くなります。
また、終活の協力者がいる場合は、協力者にも今後の目標や生き方を伝えておくようにしましょう。生前整理は自身が注意していても、協力者が誤って大切な物を処分してしまう可能性があります。
【ポイント③】物の整理を行う
物の整理は終活においてメイン作業のひとつになります。特に何十年も同じ家で暮らしてきた方の場合は、知らず知らずのうちに物が溜まっていることが予想されるため、場合によっては非常に骨が折れる作業になります。
物の整理や片付けのコツは色々ありますが、特に以下の2点を意識しておくとよいでしょう。
- 物を「必要」「不要」「保留」の枠に分類する
- できるだけ大きな物の整理から行なう
家の中にある物は基本的に「必要」「不要」「保留」の3つに分類することができます。保留の物とは具体的に説明すると「今は使わないけど、今後使う可能性がある物」などです。
一例を挙げると「冠婚葬祭などで使うスーツ」「季節限定の調理器具(鍋用のものなど)」などがあります。これらは日常的に活躍する物ではありませんが、いざというときには絶対に必要になる物です。
もちろん終活を機にして新しく新調するのもよいですが、そうでない方はこれらの物を整理するときには慎重に考えるようにしましょう。
整理中に「必要か不要か?」を考えると、先に進まない可能性があるため、取り捨てに困る物は「保留」の枠に入れておき、最後に処分の有無を決定するのがおすすめです。
また生前整理を行うときはできるだけ大きな物から整理を行うようにしましょう。大きな物から整理、処分していくことで家の中にスペースが生まれ、その後の作業がしやすくなります。
【ポイント④】不用品の処分を行う
家の中を整理するとテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの不用品が出てくることも多いです。これらは一般的なゴミと同じように出しても引き取ってもらえませんから、別の方法で処分する必要があります。不用品の主な処分方法には以下のようなものがあります。
- 自治体に処分をお願いする
- リサイクル品としてメーカーに引き取ってもらう
- 売却する
- 不用品回収業者に依頼する
自治体に処分を依頼する方法は最も一般的です。しかし、自治体の不用品回収は家電リサイクル法対象のテレビや冷蔵庫などは引き取ってくれませんので注意が必要です。
これらの自治体回収不可の家電製品などは、メーカーが責任を持って回収することが義務付けられています。家電リサイクル法対象家電の正しい処分方法は、経済産業省のWEBサイトに掲載されていますので参考にしてください。
【参考】経済産業省「家電4品目の「正しい処分!」早わかり!」
近年はインターネットオークションやフリマアプリの利用者も増加中ですから、これらのプラットフォームを利用するのもよいでしょう。
不用品1点、1点の処分方法が変わるのが面倒という方は、不用品回収業者に依頼するのがおすすめです。
不用品回収業者は基本的にどのような種類の不用品でも引き取ってくれますので「○○は自治体へ」「○○はメーカーへ」といったように、処分方法を考える必要はありません。
ただし、不用品回収業者の中には悪徳に近いような業者も存在します。そのため、不用品回収業者に依頼する場合は、必ず信頼性のある業者を選ぶようにしましょう。
【ポイント⑤】お金の整理を行う
終活を行う上では「お金の整理」も非常に大切です。
- 預貯金
- 不動産
- 株式や債券
- 生命保険
- クレジットカード
- 借入金
お金と聞くと一般的に預貯金のことばかり考えがちですが、不動産や生命保険なども立派な財産、資産として扱われます。
また終活においての財産整理はプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も明確にしておく必要があります。これは国に納める相続税はプラスの財産とマイナスの財産の合計額から算出されるためです。
お金の整理は頭で覚えておくのが非常に困難ですから、必ず「財産目録」と呼ばれるリストを作成しておくようにしましょう。
【ポイント⑥】デジタル整理を行う
今やパソコンやスマホは国民の必須アイテムになっています。ネット上から買い物や支払いができるのはもちろんのこと、外国為替証拠金取引(FX)や仮想通貨など、投資の取引きもネット上のみで完結する時代です。
しかし、これらは画面上の中だけで取引きされるため、周囲の家族が気付きにくいという一面も持っています。特に投資関係は家族が気付かなければ、死後に大変な損害が発生してしまう恐れもあります。
その損害は家族が負担しなければならない可能性もあるため、現代社会の生前整理では「デジタル整理」も行なう必要があります。
特に取引きなどを行うときには「ログインID」や「パスワード」などが必須になりますから、これらの重要データは死後、家族にもわかるようにしておかなければなりません。
また「パソコンやスマホの中に誰にも知られたくない写真、画像がある」という方も、終活を機に整理しておくのがよいでしょう。
【ポイント⑦】葬儀やお墓の希望を家族に伝える
人が亡くなることで最も大きな費用が発生するのが葬儀やお墓です。一般財団法人 日本消費者協会の調査によると、葬儀にかかる平均費用は約200万円となっています。
この平均費用の中には飲食接待費や寺院に納める費用も含まれていますが、それでも大きな支出を伴うことに変わりはありません。そのため、経済的余裕がある方もそうでない方も葬儀やお墓の規模、内容などは生前にしっかりと決めておくようにしましょう。
また葬儀にもさまざまな種類がありますので、希望などがある場合は家族にしっかりと伝えておくことをおすすめします。
【ポイント⑧】延命治療の有無
延命治療とは回復の見込みがない状態で、後は死を迎えるだけの患者さんに対して人工呼吸器や生命維持装置などを着けることを指します。
回復の見込みがないため、生命を維持するだけの状態を作るのが延命治療の役割です。病気や加齢による衰えなどによって末期症状になったときは、以下の3つの考え方や選択肢があります。
- 可能な限り治療をしてほしい(延命治療)
- 回復の見込みがない場合は延命治療をしない(尊厳死)
- 延命治療を希望しない(尊厳死宣言公正証書等)
3つ目の「延命治療を希望しない」を選択する場合は、公証役場において書面を用意する必要があります。延命治療は大切な家族と1分、1秒でも長く生きたいという方には支持されていますが、反面、入院費や治療費などもかかることになります。
経済的な面から見ると家族に大きな負担がかかる可能性もありますので、自身が末期状態になったときの延命治療の有無もしっかりと決めておくようにしましょう。
【ポイント⑨】エンディングノートを作成する
エンディングノートは遺言書とよく似ていますが、法的な拘束力はなく、自由な形式で何を書いても問題はありません。エンディングノートに書く基本的な内容は、死後の希望や指示などです。
エンディングノートを作成する前に物や財産の整理、葬儀やお墓の希望、延命治療の意思表示などを行った方は、これらの情報を記しておくのもよいでしょう。
また、中には家族への感謝の言葉、自分の人生史などを綴る方もいます。前述のようにエンディングノートには法的拘束力がありませんので、肩の力を抜いて作成してみましょう。ときには家族と一緒に楽しみながら作成するのもおすすめです。
【ポイント⑩】遺言書の作成
遺言書は本人が亡くなったあとも法的拘束力を持つ大切なものです。遺言書には財産分与に関する情報を記載することになります。
遺産相続はそれまで仲が良かった家族でも揉めることがありますので、終活の一環として行う生前整理では必ず遺言書の作成を行っておくようにしましょう。
財産が複数ある場合や法定相続人が複数いるケースでは「誰にどの財産をどれくらい与えるか?」といった点を細かく記しておく必要があります。
遺言書は決まった形式で作成しないと法的拘束力を持ちませんので、不安がある方は司法書士や弁護士などの専門家に相談するのもよいでしょう。
終活の一環で行う生前整理は時間をかけてゆっくりと

終活の一環として進める生前整理は、普段の掃除や片付けでは触れないポイントにも踏み込んでいきます。重要書類や思い出の品物にまで触れることになるため、焦って作業を進めるのはNG行為です。
生前整理はただの断捨離ではなく「自身のセカンドライフのため」「大切な家族のため」に行うものです。焦って作業を進めるとお金では購入できない大切な物を捨ててしまったり、貴重な財産を失ってしまう可能性もあります。
現代社会はプライベートの時間がなかなか取れないという方が多いですが、生前整理は時間をかけてゆっくり行うことをおすすめします。体力的問題や時間的問題を抱えている方は、生前整理業者や不用品回収業者に依頼することも検討しておきましょう。












